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72歳の男性。胸やけを主訴に来院した。60歳時から食後の胸やけを自覚していたが、食事を減らすと軽快するため様子をみていた。2週間前から症状が続くようになったため受診した。喫煙歴と飲酒歴はない。意識は清明。身長170 cm、体重78 kg。 BMI 27.0.体温36.6℃。脈拍80/分、整。血圧128/84 mmHg。呼吸数15/分。SpO2 96 % (room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認めない。 尿所見:蛋白(-)、 糖(-)、 潜血(-)。 血液所見:赤血球480万、Hb 13.9g/dL、Ht 46 %、白血球5,200、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白6.6 g/dL、 アルブミン3.9 g/dL、 総ビリルビン0.9 mg/dL、AST 20 U/L、ALT 28 U/L、LD 170 U/L(基準120~245)、ALP 11O U/L(基準38~113)、γ-GT 45 U/L (基準8~50)、アミラーゼ90 U/L (基準37~160)、尿素窒素12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、血糖 98 mg/dL。 CRP 0.5 mg/dL。上部消化管内視鏡検査の下部食道像(1枚目:胃食道接合部から縦走する粘膜障害、2枚目:胃食道接合部に複数の辺縁不整の隆起)を別に示す。内視鏡下生検の病理検査で腺癌と診断された。
この患者の病態で考えられるのはどれか。3つ選べ。

a 食道に冑から連続した円柱上皮がみられる。
b 下部食道括約筋が弛緩しにくい。
c 胃酸が食道へ逆流しやすい。
d 遺伝性疾患と考えられる。
e 肥満が関与している。

 

食後の胸やけで、GERDやNERD、機能性ディスペプシア、胃潰瘍、食道癌、胃癌などが鑑別に挙げられます。病理で食道癌なのは確定ですが、GERDが原疾患としてありそうです。GERD→Barret食道→食道癌、という流れですね。(こういう癌をBarret腺癌というそうです。)

a Barret食道の定義ですね。食道は扁平上皮、胃は円柱上皮ですが、胃酸の逆流によって胃食道接合部が口側にずれる(異形成)ことにより、aのような状態が生じるはずだったので〇。

b 下部食道括約筋が弛緩しにくいのは食道アカラシア。真逆なので×

c 胃酸が食道に逆流しやすいのがGERD。〇

d GERDは遺伝性疾患ではありません。×

e GERDは肥満など腹圧の上昇が発症因子となりうるので〇。

 

回答:ace

予想模範解答:ace(正答率90%台半ば)

 

いくら疾患の発症機序や症状、治療法を教科書で理解していても、画像が読めなければ解けない問題だったかもしれません。

117回では画像問題が著増しており、今後も画像の読み取りを重視した国試対策が重要になってくると思われます。

 

多くの方は、画像と言えば「病気がみえる」シリーズを思い浮かべるのではないでしょうか。

病みえは非常に優秀な教科書なので、是非全て揃えて持っておきたいところですが、何せ巻数が年々多くなっているのと、不定期に改訂が入るので、あまり低学年の頃に揃えても、高学年時には旧版ばかりで仕えない、なんてことになっている可能性があります。

別に古いものでも使えるのでは?と思うかもしれませんが、ガイドラインの改定に従って編集されているので、1版ぐらいの差ならともかく、2・3版前なら治療法や病型分類がすっかり役に立たないものになっていることもあり得るのです。

(私も、脳・神経だけ低学年の頃に購入したのですが、視神経脊髄炎多発性硬化症の分類についてかなり古い考え方が記載されていました…)

特に悪性腫瘍については、ケモのプロトコルがしょっちゅう変わっていますし、近年は免疫チェックポイント阻害薬の活躍が凄まじいので、国試に出ることが記述されてない、なんてことになるかもしれませんね…

 

まあ、お金があるのであれば毎回買い換えたらいいのですが、なにせ高学年ではQBを買ったり(全部で10万ぐらい)、予備校講座を購入したり(最低でも3万ぐらいはかかる)、模試を購入したり(大体1つ1万円程度)レビューブックを揃えたりする人も多いので、めちゃくちゃお金がかかります。

さらに、国試後は卒業旅行にも行かなければいけませんし(もちろん義務ではありませんが(笑))、医籍登録に6万円ぐらいかかりますし、貯金したいタイミングで散在することになるので、あんまり無駄に教科書をバンバン買う余裕がない方もいると思います。

 

ということで、私もCBTの際にメジャー科と産婦の病みえをちょっとずつ揃えたっきり、新版に買い替えることはしませんでした。(マイナー科の病みえは眼科だけ持っています。レビューブックマイナーだけでは画像が足りなかったので。)病みえの代わりに、私は昔から定番の『イヤーノート』を使用していました。

正直、内科外科はこれさえあれば何も困ることはありませんし、画像だけ掲載しているATLASという割と分厚い冊子も付属しているので、国家試験対策はもちろん、研修医になってからも使える優れものです。

さらに、本を購入すればアプリ版がめちゃめちゃ安くなるクーポンが付属するため、事実上かなりお得に国試対策の勉強を行うことができます。

レビューブック内科外科もコンパクトで良い教科書ですが、細かい知識は載っておらず、しっかり理解する所から学習したい場合、やや情報不足になってしまう感じが否めません。

その点、イヤーノートは「辞書」的な感じで使えるだけでなく、国試で出題されたところは色付きで示されており、覚えるべきところと、理解だけすべきところ、参考のみでいいところの区別がしっかりつけられています。

1冊で全て済ませたい派の人には、イヤーノートがおすすめです。