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18歳の男子。3ヶ月前から周囲の視線が気になると外出するのを嫌がり、この2週間前は自宅にいても誰かに部屋の中を覗かれているし、部屋で話す声を盗聴されていると訴えるため、両親に連れられて精神科を受診した。妄想が強いと判断され、抗精神病薬を処方された。服薬2日前から足がむずむずすると部屋の中を歩き回ることが多くなり、夜はむずむず感のため、不眠を訴えるようになった。

このむずむず感について正しいのはどれか。

a ジストニアと呼ばれる。

b 両下肢の知覚低下を伴う。

c 睡眠時無呼吸症候群を伴う。

d 脳波異常を伴う。

e 抗精神病薬の減量により軽快する。

 

統合失調症からの抗精神病薬の副作用によるアカシジアですね。

話が長くなってしまいそうなので、適当に読み飛ばしてください(笑)

a ジストニアではなくアカシジアです。×

ジストニアは、筋収縮による異常運動です。まぶたのピクピクが止まらない「眼瞼痙攣」、字を書くときや絵を描くときだけ上肢が不随意に収縮しスムーズに動かせなくなる「書痙」、あと頭頸部が偏位してしまう「痙性斜頸」はいずれも国試出題歴があります。ちなみにミオトニアは「つり革を握ったら放せなくなった」というやつで筋強直性ジストロフィーで代表的にみられます。ここら辺の違いは国試前日・当日ぐらいに詰め込んだ記憶があります。

b 両下肢の知覚低下は伴いません。×

c 睡眠時無呼吸症候群とは何ら関係しません。×

d てんかんではないですし、脳波の異常は伴いません。×

e アカシジアの治療法は、後にも説明しますが基本的には抗精神病薬の減量です。〇

 

回答:e

予想模範解答:e(正答率90%台半ば)

 

抗精神病薬の副作用(薬剤性Parkinsonism)はいろいろありますが、その中でも代表的なものを挙げると、

ジストニア

アカシジア

・遅発性ジスキネジア(口を無意識にもぐもぐするなど。一回発症したら治りにくい)

が国試的に重要なんじゃないでしょうか。

 

アカシジアは、そわそわして立ち歩かずにはいられない、じっとしていると苦しくて動きたくてたまらなくなる、といった症状です。

メトクロプラミド(プリンペラン)といった制吐薬なども抗ドパ薬なので、精神科に関わりのない患者さんでも発症しうるのでめちゃくちゃ注意。

治療法は基本的には原因薬の減量・中止ですが、どうしても減らせなかったり中止出来ない場合は、ビペリデン、トリヘキシフェニジルなどの抗パーキンソン病薬に分類される薬や、ベンゾ系のクロナゼパム、調べたところ他にβ遮断薬のプロプラノロールを使うこともあるそうです。ビペリデン、トリヘキシフェニジルは抗コリン作用があるので、緑内障前立腺肥大症がある場合は基本使用できません。

 

アカシジアの鑑別として、むずむず脚症候群があります。足がむずむずして、足を動かしていないと耐えられず眠れない、というやつです。カフェイン摂取などで増悪します。治療は、アカシジアでも使用するクロナゼパムの他、ドパミン作動薬が使用されるというのが国試で出題されてた気がします。

ついでに。レム睡眠行動障害にもクロナゼパムが使用されます。クロナゼパムは国試でまだ出題されていませんが、多分覚えておいた方がいいでしょう。

 

個人的には、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、認知症に用いるコリンエステラーゼ阻害薬、ドパミン作動薬らへんの錐体外路に関係する薬剤が、どれが錐体外路を促進してどれが錐体外路を抑制するのかしょっちゅう分からなくなります。

 

クリクラで精神科を回った時に、「精神科プラチナマニュアル」という本を貸していただいたのですが、精神科の分かりにくい薬の話がスッキリまとまっていて、学生はもちろん、後期研修医で精神科に進まれた先生方でも使える本だなあと思いました。

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筆者の松崎先生は筑波大学で、Youtubeチャンネルも運営されています。

めちゃくちゃわかりやすいので、一度検索してみて下さい。