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22歳の男性。失神を主訴に来院した。中学生のころから健康診断で心電図異常を指摘されていた。5年前に失神した際に救急外来で頭部CT、脳波検査を受けたが異常は指摘されず、経過観察となっていた。本日、朝食後、失神したため当院を受診した。外来の処置室でも動悸と気が遠くなることを訴えている。既往歴に特記すべきことはない。母方のおじが14歳時に死亡している。身長153 cm、体重46 kg、脈拍64/分、整。血圧106/72 mmHg。胸腹部に異常を認めない。血液所見: Hb13.5 g/dL、白血球 7,600、血小板 31万。血液生化学所見:アルブミン3.3 g/dL、AST 24 U/L、ALT 24 U/L、CK 34 U/L (基準30~140)、 尿素窒素11 mg/dL、 クレアチニン0.5 mg/dL、血糖94 mg/dL、Na 136 mEq/L、K4.1 mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド<BNP>27.2 pg/mL (基準18.4以下)。
心筋トロポニンT迅速検査陰性。来院時の12誘導心電図(陰性T波?QTは延長)と発作時の心電図モニターの波形(VF??)とを別に示す。
初期対応で行うのはどれか。2つ選べ。

a β遮断薬静注
b ヘパリン静注
c ジゴキシン静注
d ループ利尿薬静注
e 硫酸マグネシウム静注

 

難問です。若い男性の不整脈で、家族歴がある時点でBrugadaなどを考えますが、心電図上は明らかにQT延長症候群です。遺伝的な要因があることが明白なので、「先天性QT延長症候群」という病気なのだろうな…と予想しました(そういう病名がある事すら知りませんでした…)。

さて、そこまで分かったはいいものの。問題は「何の薬を使うか」です。

a BNPは基準値をやや上回っている程度。慢性心不全では三桁ぐらいに上昇していてもおかしくないので、この程度のBNP上昇を有意ととるかどうか悩みましたが、国家試験で初出題の疾患で、「基準値を超えているのに有意ではない」的なイジワルは普通しないだろう…と考え、現在は明かな心不全徴候はないが、心不全になりつつはある状態だと捉えることにしました。

そうすると、慢性心不全の治療薬であるβ遮断薬はおそらく投与すべきなので、〇。

b ヘパリン…?血栓でもないのに?AFでもないのに?×。

c ジゴキシン…ジキタリス…冬期講習でめちゃくちゃやったやつです。AFがないので×。

d ループ利尿薬…体液貯留を認めないので×。

e 硫酸マグネシウムは産科領域では??×。

 

ということで、a以外どれも×になってしまい、悩んだ挙句、全然納得できないまま慢性心不全で使用しうるdを選びました。

 

回答:ad

予想模範解答:ae(正答率50%台前半)

 

先天性QT延長症候群には硫酸マグネシウムを用いるそうです。

1日目の帰りにTwitterで見て、思わず「知らんがな」と呟いてしまいました。

とはいえ、50%もの人はこれを解けたということですが…私は産科領域以外で硫酸マグネシウムを見た記憶がないので、みんながどうしてeを選択できたのか凄く不思議です。

どこかの予備校で予想されていたのならともかく、硫酸マグネシウムをどういう目的で投与するのかすら知らない私にとっては、この正答率は完全に謎of謎です。

というか、心電図が大の苦手で、QTが延長していることに気付けたことですら自分的にはファインプレーだったので、もう私には解けない運命の問題だったのかもしれません…

研修医向けの心電図講座受けよ…orz