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41歳の女性。声が出しにくいことを主訴に来院した。半年前から水分摂取時にむせることがあり、2週間前から嗄声が出現し、自宅近くの医療機関で右前頚部腫脹を指摘され精査のため受診した。既往歴と家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。甲状腺右葉に硬い腫瘤を触知する。右側頚部に径1cmのリンパ節を2つ触知する。 血液所見:赤血球 404万、Hb 11.6g/dL、Ht 36%、白血球 4,800、血小板 26万。血液生化学所見: TSH 0.8 μU/mL(基準0.2~4.0)、FT3 3.1 pg/mL (基準2.3~4.3)、FT4 1.2 ng/dL (基準0.8~2.2)、サイログロブリン 141 ng/mL (基準5~30)。免疫血清学所見: 抗サイログロブリン<TG>抗体 11.3 U/mL(基準0.3以下)、抗甲状腺ぺルオキシダーゼ<TPO>抗体く0.3 U/mL (基準0.3以下)。甲状腺超音波像(辺縁不整な腫瘍?石灰化?)と頭頚部造影CT(甲状腺右葉の腫脹・石灰化?)を別に示す。胸部単純CTで肺野に異常を認めない。甲状腺腫瘤の穿刺吸引細胞診で核溝と核内細胞質封入体を有する異型細胞を認める。
まず行う治療として適切なのはどれか。

a 手術治療
b 粒子線治療
c 抗甲状腺薬投与
d 殺細胞性薬投与
e 放射性同位元素内用療法

 

甲状腺に腫瘍、反回神経麻痺もみられており、リンパ節転移もみられるが、気管や脈管系に浸潤していなさそうで、M0で、患者の年齢も41歳と若く、手術が出来ないようなポイントは問題文的にはないので、手術が妥当か。

 

回答:a

予想模範解答:a(正答率80%台前半)

 

d、eで誤答がやや割れているようですね。確かにどちらも甲状腺癌に対して行いますが、放射線同位元素内用療法は術後補助療法や遠隔転移ありの症例に対して用いるもので、化学療法は低分化癌・未分化癌・悪性リンパ腫に対して用いるようです。したがって、今回は根治的手術を優先すべきでしょう。

ちなみに、今回のような砂粒様石灰化や核内細胞質封入体は甲状腺乳頭癌で認めるようです。年齢的にも好発を考えても、乳頭癌と考えるのが妥当でしょう。