117A20

やっと20問!

 

117A20

今回も問題文が長すぎるので省略します…。

心窩部痛と食欲不振を主訴に来院された62歳の男性。半年前から心窩部痛があり、2週間前から食欲不振が出現。既往歴・喫煙歴なし、飲酒は焼酎1合/日×40年。父が胃癌。体重は半年で8kg減少。左鎖骨上窩に径2cmのリンパ節触知、上腹部に径5cmの腫瘤触知。直腸診で直腸膀胱窩に硬結を触知。胆道系酵素軽度上昇、CEACA19-9ともに高値。上部消化管内視鏡で進行胃癌。CTにて多発肝転移・リンパ節転移・腹膜播種。本人に説明したところ、「薬ではなく手術で癌を取り除いてもらいたいと思う。家族と相談してきたいのですが」とのこと。

対応として適切でないのはどれか。

a 胃全摘術を予定する。

b 家族同席で再度説明する。

c なぜ手術を希望するか尋ねる。

d 本人の病状に関する認識を確認する。

e セカンドオピニオンについて説明する。

 

本番中、実はaとeで少し悩みました。

M1であり基本手術適応はありませんが、患者さんは手術を望んでおられます。なぜ望んでおられるのか知りたいですし(c)、もしかしたら病状を正確に理解されていない可能性もあります(d)。また、家族と相談してきたいとおっしゃっているので、ご家族を交えてもう一度お話しするのも問題ないと思われます(b)。

ここで問題になるのがeです。現状、「手術は現在の病状で適応にならない」と考える医療者と、「手術をして欲しい」と思っている患者の間で意思疎通が上手くいっていない状態ですが、ここでもう一度説明する努力をする前にセカンドオピニオンを進めるのは、他の医者丸投げしてしまうことにならないでしょうか。まずは患者さんがどうして手術を望まれるのかしっかりお聞きし、こちらからも正しく情報提供を行ったうえでセカンドオピニオンを行うのは何の問題もありませんし、セカンドオピニオンは患者さんの権利なのでむしろ積極的に行うべきです。が、今セカンドオピニオンの話を出すのは少し違うような…。

さらに、aですが、根治手術としての胃全摘術は適応になりませんし、ここで患者さんにもう一度説明する努力をせずに、理解を深めないまま言われるがまま胃全摘術を行うのは、むしろその侵襲性により患者さんを害する結果になる可能性があります。しかし、M1だと手術は絶対に行わないか、と言えばそうではありません。患者さんが、手術で根治出来ると思って希望されたのか、それとも別の考えがあって手術を希望されているのか、あの発言だけではよくわかりません(取り除いて欲しいとおっしゃっているので、根治手術の事をおっしゃっているようではありますが)。ガイドライン通りではないものの、救済措置や腫瘍量の減少目的に胃全摘を行う可能背は0ではないと思いました。実際に卒試でもそういう問題があり、M1≠手術しない、というのは実臨床では大切な知識だと思います。ただし、国試ではこれは揚げ足取りみたいなものかもしれません。

まあ、これまでの国試の常識的には、この場合の「胃全摘術」は「根治的胃全摘術」を指しており、今回手術で根治は不可能だと考えて治療するのが妥当だと思われるので、ここではaを選ぶべきでしょうね。

 

回答:a

予想模範解答:a(正答率ほぼ100%)

 

正答率からしても、やや揚げ足取りな考察だった気がしますが、国試本番って普段特に気にしないようなところがめちゃくちゃ気になってしまうんですよね。

 

学生時代、がん治療を専門にされている先生方とお話しする機会が何度もあったのですが、やっぱり国家試験で習うがん治療はガイドライン通りの治療なので、実臨床では往々にして異なることが多々あるそうです。私も腹膜播種のあるがんの患者さんがオペ適応になった話を聞いたことがありますし、こういうのはケースバイケースですね。とはいえ、国試ではやっぱりガイドライン通りに解答するのが妥当かと思います。